澄んだ空の下で
「あっ、あの…」
ふと思い出した昨日の出来事に、あたしは慌てて口を開く。
「うん?」
食べ終えた恭は咥えていたタバコに火を点け、視線をあたしに向けた。
「あ、あの…。昨日は…そのゴメン。送ってもらったりして…」
そう言いながらあたしは視線を少しずつ落とす。
「別に。帰る方向あっちだし」
「そっか。…で、でもっ、なんかみっともない所、見せちゃったね。…一応あれでも母親」
「……」
「だ、だから…あまり帰りたくなくてさ、ここに居る感じ」
「……」
手に持ってたお茶から呆れかえった様に微笑んで視線を恭に向ける。
ベンチの上で器用に胡坐を掻く恭は得にこれといって反応を見せない。
だから。
「だからさ、決して…アンタのストーカーではないから」
少し笑いながらキッパリと告げた言葉に、恭は俯いたままで何も反応を見せなくて、視線を逸らす様に立ちあがってフェンス先の街並みを見つめた。