澄んだ空の下で

「寂しくねぇの?」

「え?」


暫くの沈黙の後、小さな恭の呟く声にゆっくりと振り返る。


「だから寂しくねぇのかって」

「どうだろう。あんま思った事ないな…これが当たり前だから。だから、一人が楽」


フェンスに背を付けて、あたしは恭から視線を落とす。


「…そっか」


小さく呟かれた声に、「うん…」とだけ返した。



だからと言って、恭の事までは聞けなかった。

さすがに図々しくて、深入りは出来なかった。


立ちあがった恭はフェンスの前に立つ。

その横顔が悲しそうに見えたのは気の所為だろうか。


ボンヤリと眺めるその表情はまるで感情のない冷たいままだった。


「あ、あの。恭…くん?」

「え?」


不意に口を開いたあたしに、少しだけ目を見開きあたしに視線を送る。


「あっ、ほら。昨日女の人が言ってたから」

「あー…って、言うか、別に“くん”いらねーし」

「あー、うん」

「で、何?」

「あ、うん。あの女の人、大丈夫だった?」


ふと頭の中を過った昨日の出来事。

あの、女の人の瞳があまりにも良くはなかったから。


あたしの所為で、攻め立てられてるんだろうと思ったから。


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