澄んだ空の下で

「大丈夫って?」

「なんか怒ってるっぽかったし。あたしの所為で…」

「別に何ともねーよ。アイツはいつもあんな感じ」

「あー…そうなんだ」

「結構面倒くさいからな、アイツ」

「へー…」


まぁ、見た感じで薄々分かる気はするけど。

でも、何にもないなら良かった。


「なぁ、ここってさ。あの丘が見えんだな」

「え?」


急に話を変えられた事に上手く頭がついていけず、思わず声が裏返ってしまった。


「だからあの丘」


フェンスの穴から人差し指を突き出す恭の指先を辿って行くと、物凄い遠い位置にある丘が目に入る。

ここから見る丘は小さくて小さくて、カナリ遠い位置にあるのかを証明する。


「あー…うん。あっちからは見えないの?」

「見えねぇな。このビルで」

「そうなんだ」

「あの丘行ったある?」

「ないけど」

「景色すげーよ」

「高い所、好きなの?」

「景色が好きなだけ」

「へー…そうなんだ」


なんか以外だったかもしれない。

こんな風に話してくれる事も、景色が好きって、言った彼も…

全て、何だか意外なようだった。
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