澄んだ空の下で
「あのさ、一つだけ聞いてい?」
「なに?」
「なんで留年したの?」
「……」
聞いちゃいけない事だって分かるの。
だけど、どうして住む世界が違う人が留年するのか気になった。
あたしには良く分かんないけど、お金があれば何とかなるんじゃないの?
暫く経っても口を開かない恭に、やっぱり言っちゃいけない事だと確信する。
「あ…っと、ごめん。変な事聞いた。何でもないから」
「……」
「……」
「…行ってなかった」
「…え?」
少しの沈黙後に聞こえた小さな声に思わず反応して、顔を上げた。
寝転がって額の上に腕を置いている恭は目を瞑っている。
「行かなかったから。…ただ、それだけ」
「行って、なかったの?」
「そう。半年以上行ってなかった」
「なん…で?」
「行きたくなかったから」
「…そう」
それ以上何も聞けなかった。
これ以上何だか深入りはしちゃいけないと、そう思ったから。
だけど、暫くして口を開いたのは恭からだった。