必見・夕暮れの陰陽部!【短編版】


「でも、不思議なことに」

「不思議な、ことに?」

「あの子、どんなイケメンに告白されても、首を縦に振らないらしい」

 おそらくは、それも先輩曰くの逸話だろう。

「それって、単に理想が高すぎるだけなのか?」

「それとも、ブス専なのか。どっちかだな。でも小ざっぱりとしてて分け隔てない性格は、男子女子問わず人気があるんだってよ」

 デブ専という趣向を持つ人は耳にしたことがある。

デブ専があるのだから、ブス専もあるのかもしれない。

――話に聞く限り善い人なのだろうが、なんだか、晴也には自分と細川を恍惚と見つめるあの雅の瞳が、どこか妙に感じたのだった。

彼女のきらりと光る眼は、ときめいていたというよりも、

俗にいう『胸キュン』していたようであった。

 晴也は地味な風貌であるし、本人もそれを十分に自覚している。

言ってしまえば、細川も美男の部類に入る容姿ではなかった。

 だから、あのような美少女にきゅんとされる心当たりは、どこにもない。

(顔で選ぶ子じゃあないのかもな)

 人相のみであれやこれやと決めつけぬのは、勿論よいことである。

 うん、そうだよ、みんないい性格してるって言ってたもんな、と晴也は半ば強引に納得していた。


 その、矢先であった。








「秀才眼鏡とバレー部の準エース。


うん、また新たなるカップルが誕生しましたよ、ぐふふふふっ……」










---と。



 そんな禍々しい含み笑いが、あの、雅が駆けていった女子トイレから響いてきた。









 



 
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