必見・夕暮れの陰陽部!【短編版】
「なにっ。
晴也、おまえ……いつから男なんか作ったんや」
ひとりで食いついてきた吉郎は勝手に妙な方向へと走り出し、晴也の腕を抱いて、よよよ、と泣き崩れた。
「俺と二人乗りしたあの夕暮れはいったい、いったいなんやったねん……!
俺よりもその準エースが大事なん?」
「あんたらの目には友達同士のやりとりも同性愛にしか映らねーのか!
どこをどうやったら僕らがカップルに見えるんだよコラ!」
「先輩っ、それは違いますっ。
きっと晴也君にそのつもりはなかったんですよ」
そこで花子が割り込んできて、あたかも出来心で浮気をしでかした者を庇うように言った。
「多分、晴也君は細川君の想いに気付いていなくて、
晴也君からしたら、その細川君はただの友達なんですよ。
だから仲良く接してるんですよ、鈍感だから彼の想いを察せないんです」
「あのう、雅花子さん?
君ってなに、妄想を真実として考えてるの?
ねえ、聞いてる?」
「そして鈍感な晴也君は、先輩の想いにも気付けていない……。
そう、まさにいまここで、晴也君を巡る三角関係が成立したんですよ!」
「おいいい!!
もうやめろ、そのへんにしろ!
これ悪くしたら一生トラウマになるから!
エスカレートしたらある意味で名誉棄損だから!!」
必死に抗議するが、花子は「ホモに名誉もくそもありません」とばかりに、晴也の主張など聞いて聞かぬふりである。