必見・夕暮れの陰陽部!【短編版】


 普段は陸上部や野球部が外周でこの川にかけられた橋を渡る。

当然、晴也たちがあ川の瀬で正座しているところだって目につくはずだった。

 だが幸いにも、今日は誰一人として川に近寄らなかった。

 ぱん、と陰陽部の一行が合掌する。

着火され、じわじわと燃えてゆく線香からは、独特の香が染み出てくる。白煙がゆらめき、漂っていた。

「……ヌートリアって、チーズ食べますかね?」

 花子が問うた。

「さあな」

 吉郎が即答する。

 正座したことによってついた土を払い、吉郎はうんと背伸びをした。

「まあ、そろそろ暗くなってきたし、もう帰る時間やな。晴也と花子は、先に帰ってくれ」

「先輩はまだ残るんですか?」

 僅かに懸念を浮かべた瞳で訊いてくる晴也を目にするや、再び、彼らの腐った趣味が水もたまらず開花した。

こそこそと互いに身を寄せて、

「おいおい、花子、見たか?あいつ、俺のこと心配してくれとるで」

「してますねえ、先輩。これはいけますよ。日進月歩で好感を育めてますよ。

オトゲーだったら、あともう少しでカップル成立ですっ。

細川君には悪いけれど。ぐふふっ」

 などと、聞くに堪えない言葉を交わしている。

(こっ、こいつらぁぁぁ!)

 晴也はと言えば、なにかが絶頂に達したような危うい面差しをしている。

「おいぃぃっ、あんたらいい加減にっ……!」

 ついに火を吐きはじめた晴也だったが、その恫喝は、突如として凄惨な悲鳴に遮られた。


「きいやああああ!」










 
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