必見・夕暮れの陰陽部!【短編版】


***

それから三日が経ち。


「それっ」

花子の掌から、呪符で成された折り鶴がひとりでに舞い上がる。

「おお、うまいやん」

「これを愛し合うイケメンカップルが伝達に使うものだったら、萌えがアップするんですけどねえ」

折り鶴ーーー吉郎曰くの式神が宙を舞う中、晴也はひとり飛ばない紙人形を手にしていた。

「晴也は、なかなか飛ばんな」

吉郎は言った。

「やっぱり、霊能的なものがないとだめなんですかね」

「いや、そんなことはあらへんけど……集中力とか、あと、信憑の度合いの問題かもなあ」

吉郎は小首をひねっている。

「信憑性、ですか」

「方術に必要な力量ってのは、専門家だから出せるものじゃなくてな、

呪力っていうんやけど、それはどんな人にだってあるんやで」

「だとるすと、個人差によるんでしょうか?」

「呪力の優劣は、目的意識の強さがどうのこうの、ってオカンが言っとったけど、なんか嘘くさいわな。

要はメンタルやろ、メンタル」

「先輩は、やっぱりそういうのを意識してるんですか?」

晴也の問いかけに、吉郎は仕切りに顎を触りながら、ぱちりと指を鳴らした。

「俺はあんまり深く考えた事あらへんけど、

たぶん、そういう事には、怨霊の成り立ちがよく関係しとるんちゃうかな」

「怨霊ですか」

「あいつらもそうやで。

恨みの力が強いほど、呪力が強くなっててごわい怨霊になる」

「それって、地縛霊とか、心霊写真に写る人とも似てますよね」

途中で花子が口を挟んでくる。


「うちのお寺、よくお祓いしてくれって頼まれる事があるんですけど、

ああいうのに写るのは、たいていがこの世に悔いを残して、

とどまろうとする一心で成仏できないんだとか」

ホモふたりのいう事は専門的で難しいが、説得力はあるように聞こえる。






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