必見・夕暮れの陰陽部!【短編版】
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それから三日が経ち。
「それっ」
花子の掌から、呪符で成された折り鶴がひとりでに舞い上がる。
「おお、うまいやん」
「これを愛し合うイケメンカップルが伝達に使うものだったら、萌えがアップするんですけどねえ」
折り鶴ーーー吉郎曰くの式神が宙を舞う中、晴也はひとり飛ばない紙人形を手にしていた。
「晴也は、なかなか飛ばんな」
吉郎は言った。
「やっぱり、霊能的なものがないとだめなんですかね」
「いや、そんなことはあらへんけど……集中力とか、あと、信憑の度合いの問題かもなあ」
吉郎は小首をひねっている。
「信憑性、ですか」
「方術に必要な力量ってのは、専門家だから出せるものじゃなくてな、
呪力っていうんやけど、それはどんな人にだってあるんやで」
「だとるすと、個人差によるんでしょうか?」
「呪力の優劣は、目的意識の強さがどうのこうの、ってオカンが言っとったけど、なんか嘘くさいわな。
要はメンタルやろ、メンタル」
「先輩は、やっぱりそういうのを意識してるんですか?」
晴也の問いかけに、吉郎は仕切りに顎を触りながら、ぱちりと指を鳴らした。
「俺はあんまり深く考えた事あらへんけど、
たぶん、そういう事には、怨霊の成り立ちがよく関係しとるんちゃうかな」
「怨霊ですか」
「あいつらもそうやで。
恨みの力が強いほど、呪力が強くなっててごわい怨霊になる」
「それって、地縛霊とか、心霊写真に写る人とも似てますよね」
途中で花子が口を挟んでくる。
「うちのお寺、よくお祓いしてくれって頼まれる事があるんですけど、
ああいうのに写るのは、たいていがこの世に悔いを残して、
とどまろうとする一心で成仏できないんだとか」
ホモふたりのいう事は専門的で難しいが、説得力はあるように聞こえる。