必見・夕暮れの陰陽部!【短編版】
古典にあった、安倍(あべの)晴明(せいめい)の陰陽師伝説が想起された。
平安朝―――陰陽五行の思想に基づいた陰陽道によって占筮(せんぜい)及び地相などを職掌とする方技の官人を、陰陽師という。
彼らは陰陽五行思想に立脚し、これと密接な関連を持つ天文学、暦学、易学、時計などの職に携わった。
朝廷での争いが激しくなると、身辺の被災や弔事が頻発したために、怨霊におびえ続けた貴族らが、にわかに朝廷を中心に怨霊を鎮める御霊信仰が広まらせた。
そして悪霊退散のため、呪術によるより強力な恩恵を求める風潮が強くなった。
陰陽師はこれを背景に、古神道に加え、方術や霊符呪術のような道教色の強い呪術が注目されていった。
その代表的な人物として、天文博士・安倍晴明が挙げられる。
陰陽師はかげとひかり。
陰と陽。
「いんよう」と書いて「おんみょう」と読むのだ。
「あの、部長。陰陽部ってなんですか。ここ、奉仕活動部でしょ」
晴也が問うと、ん、と彼は頭を前に振った。
「学校ほうし活動部。またの名を陰陽部や。おわかり?」
「いや、説明になってませんよ。ここって奉仕活動する部活なんでしょ。ボランティアみたいなものでしょ」
「ううん、ボランティアやないな。学校を守る代わりに、しっかりと報酬はもらっとるでえ」
ボランティア部がする活動は主に些細な手伝いや支援活動であって、学校の守備などといった警備員まがいの事はしない。
しないし、どこの部活動だってそんな事は活動内容の項目には入れないだろう。
しかも、有給活動だ。部活動というよりも仕事のようである。
部室は、ほとんど何も置かれてはいなかった。
入ってすぐの地点に長い机と椅子があり、すぐ右を見ればパソコンが一台設置されている。
それと右前の隅にある、別の部屋の入り口と思しきドアだけがあった。
部長は晴也を椅子に座らせて、
「俺、ちょっといろいろ持ってくるで。座って待っとってえや」
とだけ言って、そそくさとその場を去って行った。
半ば強引にパイプ椅子に座らされた晴也は、言われた通り、そのまま奥のドアをくぐって別の部屋へ行く部長をただ待った。
会議室から借りてきたような、長い木目がついた机に肘を突くこともなく、だ。
すると、晴也はふと四囲の壁に目をくれた。
部室の至るところに張り付けられた、レトロゲームに登場しそうなシルエットの紙人形。
それらが、風もなくさわさわと手足の部分を揺らしているのだ。
非科学的な事を言ってしまうと、まるで生きているよう、である。
(まさかな)
魔法じゃあるまいし。