未熟色の君たち


「本当は、芳成がそのカフェに行きたかったんでしょ? 仕方ないから付き合ったげる」

泳いでいた視線がやっと合った。
わざと頬を膨らませ、我儘を装うその目は揺れている。

俺にまで強がって見せる由香里が、いじらしくて仕方なかった。

俺は、ケツのポケットに捩じ込んでいたハンカチを取り出し差し出した。
途端、由香里の目から大きな粒が零れ落ちる。

「……だからっ……。ハンカチ、クシャクシャだってばぁ……」

由香里は、泣きながら笑う。
ポロポロとこぼれる涙を、クシャクシャのハンカチで押さえて笑う。

「芳成って、ホント優しいよね」

涙を拭いながら由香里は言う。

「由香里だって優しいじゃん」

俺の言葉に、由香里がまた泣きながら笑った――――。


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