未熟色の君たち
そこには、隣のクラスの大崎旬が立っていた。
「俺。折りたたみも持ってるし。これだけ降ってると一つの傘じゃ意味ないよ」
返事もせずに、ぼうっと突っ立っている私に、大崎はビニール傘を握らせる。
「あ……りがと……」
奪い取った傘を持ったまま、芳成もぽけっとしている。
「それ。返さなくてもいいから」
そう言うと、大崎は雨降る外へと出て行った。
私と芳成は、今起こった事にいつまでもぽけっとしたまま雨の中を歩いていく大崎の後姿を眺めていた。