ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 かくて作法、必要とされる会話の教養、そして幾種類かのダンスの仕方まで、みっちり叩き込まれた。

 さいわい、ローズはしごく飲み込みの早い生徒だった。どんなに叱責し、やり直しを命じても、弱音を吐かず熱心に努力する。

 そうひそかにテンプル夫人が、陰で子爵に褒めるほど。

 日ごとにレディらしくなっていく彼女を、エヴァンは時折訪れては、目を細めて見守っていた。

 叱られながらも、とにかく一生懸命努力している彼女の気持ちが何より嬉しかった。

 時が来たら、自分の名前と名誉すべてを彼女に捧げようと、彼は改めて心に誓っていた。

 おかげでその年の終わりには、ローズはひとかどのレディとしてのたしなみを、すべて身につけていた。

 エヴァンはウェスターフィールド家で毎年催される恒例のパーティで、ローズを親族や招待客に紹介し、自分の婚約者としてロンドン社交界にデビューさせようと考えていたのだ。

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