ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
そして、ついに当日の夕刻になった。
屋敷の準備は万全に整い招待客が訪れ始める中、ローズはメイドに手伝ってもらいながら、自分の部屋で衣装を身につけていた。
女なら誰もが胸をときめかせずにはいられないような何枚ものドレスの中から、今日のために選んだのは、アイボリーのシンプルだが女らしいサテンのイブニングドレスだった。
金髪をカールさせて、イタリアンレースのリボンで結い上げる。
興奮しているせいかいつもより生き生きと輝いてみえるブラウンの瞳、紅をさした唇は露を含んだ薔薇のつぼみのようだ。
襟もとが開いたサテンのドレスは彼女のまだ華奢な身体の線を柔らかく包み込み、膨らんだスカートがささやくように柔らかく揺れている。
ほっそりした白いうなじに真珠のネックレスを幾重にもまいて、耳元にも同じイヤリングをとめると、鏡の中の姿に目を丸くした。
どう見てもどこかの高貴な令嬢だ。まるでシンデレラの魔法に掛かったようだった。