ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
本当に、もう十分だわ。
彼女はマントをかき合せると小走りに外に出た。
だが、彼もあっさり解放するつもりはないようだ。早足で後を追ってくる。
「いったいどういう意味だ? 僕のため? 突然かき消すようにいなくなって、どこを探しても見つからない。あれから僕がどんな思いで過ごしたか、君には到底わからないだろうさ。どうしてあんなことをした? 説明してほしい。そのために、この時期にこんな田舎まで、わざわざ馬車を飛ばしてやってきたんだからね」
エヴァンが目の前に立ちふさがるように回り込んできた。
明るい光の中で一年ぶりに見る彼は、やはりとても魅力的だったが、その顔は覚えていたより少し痩せて引き締まり、口元には見たことのない嘲弄めいた微笑が浮かんでいる。それが、二十五歳という実際の年齢より少し歳上に見せているようだ。
この村では見かけたこともないほど洗練された旅行用の衣服を見るだけで、彼の身分が推し量られた。