ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「エヴァン、しかしその娘は……」

 一同の考えを代弁するように、顔をしかめて切り出したウィルソン氏に、エヴァンは氷のような一瞥を投げた。

「叔父上、無用なお口出しは控えていただきたいと思います」

 一睨みされ、ウィルソン氏は隣で憤懣の相を呈している妻の顔を見ながら黙った。

 だが、その張り詰めた緊張感が一番こたえたのは、他ならぬローズ自身だった。

 さっきから身の置き所がないような、いたたまれない思いになっていた。

 彼の隣に立ってしっかりと顔をあげていることが、だんだん難しくなってくる。

 ああ、やはりわたしが何者なのかもうすべてご存知なんだわ。

 認めてもらえると思ったわたしは、なんて……。


 その時だった。

「エヴァン! どこにいらっしゃるの?」

 ホール入り口付近のざわめきの中から、突然華やかな声が飛んだ。

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