ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
教会の前でにらみ合うように立っている二人は通行人の目を引いた。
ローズは、頭をふって後ずさった。
「本当にそんな説明を聞きたくて、こんな田舎まで来たというの?」
「それだけじゃない。三ヶ月ほど前に、祖母が亡くなってね」
「まぁ、お気の毒に……」
「本気でそう言えるのかい? 君は……」
彼が表情を曇らせた時、二人の沈黙を破るように背後からがさつな大声が響いた。
「こいつは驚いた。あんたもなかなか隅に置けないな。いや、確かにご立派なお連れだぜ。ひとつご紹介してもらいたいもんだ」
またデントだ。だがその瞬間、ローズはこぼれんばかりの笑みを浮かべて、大男に駆け寄った。
デントを見てありがたいと思うのはこれが最初で最後だろう。
「ああ、デントさん、ちょうどいいところに来てくれたわ! この人、本当にしつこくて困っていたんです。ねぇ、あなたとキングスリー家のパーティに行く約束だったでしょう? この人にそう言ってちょうだい」
愛想よく言いながら、ちらりとエヴァンを見やる。
彼はしばらく目を細めてじっと見ていたが、やがて黙って顔を背けると、ゆっくりと歩き去ってしまった。