ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

「ぼくがそれほど軽い気持ちで、君に結婚を申し込んだと思っているなら、まったく心外だし、むしろ……侮辱とさえ受け取れるね」

「そんなつもりはないけれど……」

「もちろん、すべて考え抜いた上でのことだ。君が心配するようなことは何もない。だいたい、社交界の花だのなんだの、そんなことを君に要求した覚えはないし、やって見もしないうちから、馴染めないと決めつけるのも馬鹿げている。君の考え過ぎだ。もうそれ以上考えるのはやめて、すべてぽくに任せておけばいいのさ」

「そうは……いかないわ」

「君があのパーティの夜、そんな風に感じていたとは思わなかった。確かにあの当時は……、少し先走り過ぎたかもしれないな」

「それはもういいの。とっくに過ぎたことだもの……」 

「そう、過ぎた過去のことだ。なのに君の中には、まだしっかり残ってしまっているようだね。そんなつまらないことに囚われて、ぼくらの未来まで失おうとしてる。それこそ馬鹿げてると思わないかい?」
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