ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
狭いが、きちんと手入れされている。居心地のよさそうな住まいだ……。
オリビアに案内され、掃除の行き届いた廊下を歩きながら、子爵は考えていた。
こういう家の敷居をまたぐのは、彼には初めてのことだった。
客間も広くはないが暖かく、暖炉の前にかなり年季の入った肘掛け椅子数脚と、お茶用のテーブルが置かれている。
広くて豪奢だが、家庭的という言葉からはほど遠い、むしろ人を寄せつけない冷たささえ持つ自分の屋敷と、思わず比べてしまった。
ローズの優しさや温かさは、このような雰囲気の中で育まれた気質だろう。
以前彼女が話していた家族の話を思い出し、肯けるような気がした。
ハワード氏はパトリックから話を聞くなり、飛ぶように家に帰ってきた。
エヴァンは善良そうなハワード氏に好感を持った。
挨拶と自己紹介の後、ローズが自分の屋敷に家庭教師として来たことから始めて、簡潔にことの次第を説明していった。