ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
一人になり、ようやくほっとする。
改めて辺りを見回すと、村で顔見知りの婦人達もいて、何やら話し込んでいた。
このパーティはソールズばかりでなく、近隣の裕福な家の人達の社交の場らしい。みんな一張羅の晴れ着で精いっぱいめかし込んでいる。
石造りの広間は、古い肖像画とゴブラン織りのタピストリーで飾られ、左端には食事のテーブルがセットされていた。
臨時の給仕に雇われた村の若者が忙しく立ち働いて、クリスマスのご馳走を並べたり切り分けたりしている。
大きなクリスマスツリーはごてごて飾りつけられ、下には贈り物の箱が山のように置かれていた。
突然、一年前の子爵家でのパーティが目の前によみがえり、ローズは立ち止まった。
それはすべてがあまりにも輝いていたときの最後の幻だった。
長い金髪を結いあげ、未来の子爵夫人として恥かしくないようにと、彼から贈られたドレスや宝石で精いっぱい装いを凝らした自分がいた。
エスコートしてくれたエヴァンのまぶしいほどの笑顔……。
次に来るのが苦い敗北だとは、あの時はまだ知らなかった。
波のような追憶に襲われ、彼女は唇を噛みしめた。