ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
ウェスターフィールド邸の扉の前に立ったパトリックは、深呼吸して重いノッカーを叩いた。
子爵が自分などに、直接会ってくれるかどうかが一番問題だな。
そう考えながら、出てきた執事に自己紹介し用件を告げたとたん、相手の顔色が変わった。
「旦那様にお知らせしてきますので、少々お待ちくださいませ」
慌ただしく引っ込むと、数分後に再び出てきた。
「お上がりくださいとのことです。こちらへどうぞ」
執事に案内され、パトリックは初めて貴族の邸内に入っていった。
高い天井、広い廊下に格調高い豪奢な内装、どっしりとした年代ものの家具調度類。
廊下の壁にかけられた騎士や貴婦人達の肖像画を目にし、圧倒されてしまう。
上着のほこりを払いながら、こんなことなら日曜礼拝用の一番よい服を着てくるべきだったと激しく後悔した。それでも精いっぱい襟を正すと、彼は書斎に入っていった。