ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 一人になったエヴァンはゆっくりと机に戻り、引き出しからさっきの手紙を取り出した。

 美しい筆跡で彼の名が書かれた封筒。中に感じる硬い小さなものの感触に、ぞっとしながらペーパーナイフで開く。

 手の中に彼女に渡した指輪が音もなく落ちた。白い便箋にはただこう記されていた。


『どうかもう、いらっしゃらないでください。これ以上お目にかかれません。
 あなたのお幸せを、いつも心からお祈りしています。

                ローズマリー・レスター』


 彼は思わずその手紙を、手の中で握りつぶしていた。

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