ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜

 午後になるのをじりじりしながら待って、エヴァンは再びハワード家を訪れた。

 オリビアからローズは留守だと言われたが、納得できず彼女の部屋に入れてもらう。

 テーブルと椅子、狭い寝台とチェストが置かれただけの狭い空間は、こざっぱりと片付いていた。

「どこへ行ったのか、ご存知ですか?」

 眉をひそめる子爵に、オリビアはしきりに恐縮しながら答えた。

「それがその、新しい勤め口を探すとか申しまして、出かけてしまったのです」

「新しい勤め口? どういうことです?」

「はぁ、あの、本当に困った娘でございまして……」

 その後、誰に似たのか頑固者で、とかわたくしどもは口をそろえて子爵様のお申し出をお受けするよう一生懸命説いたのですが、などと繰り言が続く。

 それを聞き流しながら、子爵の内心は治まらなかった。

 荒れ狂う胸の内を何とか表に出さずにいられたのは、彼のプライドと日ごろの訓練の成果だった。
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