ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
聞くなり血相を変えた彼女に、彼は目を細めた。
「それならここでも構わない。ずいぶん長い外出だったね。どこへ行ってたんだい?」
「………」
「君の伯母上は、君が『新しい勤め口を探すと言っていた』と言っていたけど……?」
静かに促され、ローズは覚悟を決めて顔をあげた。
「ええ。また何か仕事を見つけないといけないもの……」
「何のために?」
「生きるために、よ」
「必要な費用なら、いくらでもぼくに言えばいい」
言いかけた子爵に、彼女はすぐさま首を横に振った。二人はしばらく無言だった。
「どうしても、気持ちは変わらないのかい?」
長い沈黙の後、再び問いかけた彼の声には絶望的な響きが混じっていた。
彼を正視できず、目をそらせたままローズが小さく肯く。その口調には強いあきらめが混じっていた。
「何度お尋ねくださっても同じ。わたしには無理です。だから、もうこれ以上お会いしないほうがいいわ。どんなに辛くても」
「無理だ無理だと決めつける前に、どうしてもう一度やってみようとすらしてくれない?」