ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
しばらく経って、ようやく自制心を引きずり出したように彼は顔を上げた。
二人とも息を切らし、乱暴なキスのせいで彼女の唇が赤く腫れていた。
その目の奥にいまだくすぶっている情熱を確認し、子爵は満足そうに微笑みかけた。
だがローズは夢から覚めたように瞬きし、貴婦人のたしなみを取り戻そうと震える手で髪を整えた。
エヴァンが再び取ろうとした手を素早く引っ込める。
「いいえ、今お返事した通りです。もうお会いできません」
「ローズマリー!」
「お願い、エヴァン。どうかわかって!」
目に熱い涙が膨らんでくる。次の瞬間、彼女は震える手で馬車のドアを闇雲に押し開けると、往来へ飛び出した。
「もう二度と来ないで。本当にさようなら!!」
振り返り際こう叫ぶなり、いそいで捕まえようと伸ばした子爵の手を擦り抜け、まっすぐ家の方に走り去っていった。
彼はただ呆然と見送る以外、どうすることもできなかった。