ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
しばらくの間、彼女が走り去った通りを、焦点の合わない目で見つめていたエヴァンは、やがて馬車の座席にがっくりと崩れるように座り込んだ。
頭をビロードのシートにもたせ掛け、力なく目を閉じる。
終わりだ! これ以上なす術は何一つない。
今度こそ彼女は本当に自分のもとを去ったのだ。
一年前、一言も言わずに消え失せてしまった恋人を、探して探してようやく見つけ出し、この手に取り戻したとほとんど信じかけていたのに。
結局、あのじりじりするような探索と努力の日々は、この避け難い現実をただ確認するためだけだったのか?
あまりの皮肉さに苦い笑いが込みあげてくる。
こんな別れをもう一度味わうくらいなら、いっそ再会などしなければよかった。
これでは出会わなかった方がまだましではなかっただろうか。はっきり答えを聞かずに済む分、直接的な傷は浅かっただろうに。
そう考えた途端、彼女がずっと逃げ回っていた理由が飲み込めた。
再会した時から、彼女はこの日を避けられないと思っていたのだ。