ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
二十五歳の端整な顔に、たちまち濃い陰りが浮かんだ。
「まったく……。信じられないことをやってくれるね、君って人は……」
ついにあきれたように書類を投げだすと、机上の銀のシガレットケースから細い葉巻を取り出し火をつけた。
香り豊かに立ち上る紫煙の先に、まるで誰かがいるように目を凝らす。
彼はこの一年、片時も脳裏から離れなかった一人の少女の姿を、心の中で見つめていた。
本当に長かった……。
去年のクリスマスイブ、外出先から戻って、狂ったように彼女の部屋へ駆け込み、彼女がいなくなったことが事実だと思い知らされた、悪夢のようなあの瞬間……。
今も思い出すだけで、心に刃が突き刺さるような気がするほどだ。
以来、心に付きまとう喪失感は、どんなに自らを説得しようと、てこでも動かなかった。
なぜこれほど探すのか、と自嘲することもあった。もう忘れてしまえと自分に言い聞かせたことも一度や二度ではない。
今なおわき上がる苦々しさを振り払うように、彼は葉巻をもみ消すとベルに手を伸ばしかけた。