ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜


 カールさせた黒髪を結いあげ、青ビロードのドレスで着飾ったメアリーが、頬を紅潮させて子爵のリードに身を委ね、うっとり見上げている。

 徐々に踊りに加わる人が増えていった。


 オリバー・デントがローズを再び探し当てた時には、なんだか気分が悪くなっていた。

 彼女の訴えを聞くなり、デントはそのままテラスへ引っ張って行こうとした。

「さっき飲んだパンチが効いたのかもな。そういう時は少し外の風にあたるのがいいぜ」

「結構ですわ。もうわたしのことは放っておいて。下宿に帰りますから」


 無理に連れ出そうとするデントに腹が立ち、ローズは取られた腕を相手の手から引き抜こうともがきながら言い切った。

 これ以上言ってもダメならひっかいてやろう。もう体裁を繕う余裕はない。

 その時、少し離れた所から意外な声がした。


「そちらのレディは、嫌がっているように見えるね」

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