ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜


 やがて、賑やかだった披露の宴も終わり、夜の帳が下りた。

 メイドが、湯浴みを済ませた彼女の金髪をきれいに解きほぐし、細かい刺繍を施した白いサテンのガウンを着せ掛けてから、お辞儀をして下がっていく。

 今では二人の寝室となった広い主人の間に、ローズは一人取り残された。

 壁のランプの淡い灯りの下、部屋にある大きな天蓋付きのベッドを見ていると、我知らず頬が火照ってくる。


 落ち着くために鏡の前に座って、なおもブラシで髪をくしけずっていると、ドアが開いてエヴァンが入ってきた。

 彼はローズの緊張した気配を、敏感に察したようだ。

 傍らに立つと彼女の手からそっとブラシを取りあげ、その金糸のような髪を一房手に巻きつける。

「少しは伸びたみたいだね。君のこの髪が好きだ。もう当分切らないで欲しいな」
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