ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
三人は暖炉の前に置かれた椅子に腰を下ろした。メイドがお茶を運んでくる。
「具合はいかがかな」
キングスリー氏が丁重に切り出した。
「はい、ずいぶんよくなりました。もうそろそろ下宿に帰れると思います」
「あら、ミセス・バンリーの話では、あちらの部屋を引き払ったそうね? あなたの荷物が届いていますよ。どこか他に行く所があるの?」
見る見るうちにローズの顔が青ざめた。
「し、知りませんでした……。そんなことしていません。どこで誤解されたのかしら」
「子爵様がそうしろとおっしゃった、と聞いたけど」
「エヴァン、いえ、子爵様が?」
仰天した彼女に、二人は「おやおや」と顔を見合わせる。
「それにも関係するんだがね、もしあなたがよければ耳寄りの話がある。以前から、お話したかったのだが、なかなかその折がなくてね。今こうして当家におるのも良い機会でしょう」
ローズの顔がさっと強張った。下宿を失った上、今度は職を解雇されるの?