ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「ここから十五マイルほどの所に、シークエンドという村があるのはご存知ですな。ここよりは小さいが、住みやすい所ですよ。村人も気立てのいいのばかりだし」
「……はい」
「そこの牧師館に近ごろ、新任牧師が赴任してきたのです。歳は三十前くらいだったかな。まだ一人身なので、何かと不自由な暮らしをしていて、彼の村での活動のよき協力者となり、伴侶となれる若く聡明な娘さんを探しておるのです。その辺の教養もない村娘に、牧師館のきりもりなどできはしない。その点ミス・レスター、あなたならちょうどよいのではないか、と家内も言うのですよ」
「それはつまり……、その方と結婚……というお話なのでしょうか?」
びっくりして問い返すと、氏は大きく頷いて見せた。
「あなたは確か十九歳でしたな。結婚相手として、不足はないと思うのだが。いかがかな? ひとつお会いになってみては? 信心厚い立派な牧師だと評判ですよ。名はマーク・ウォリスとか」
「お気持ちは大変ありがたいのですが……」
ローズが信じられない思いで断ろうとすると、それまで黙っていた夫人が、横から口を挟んだ。
「まさか、今すぐお断りされるんじゃないですよね。まだ会ってもみないうちに。こんなぴったりのお話、そうざらにはないんですよ」
親切そうな口ぶりだが、厄介払いしたい様子がありありと覗える。キングスリー氏もしきりに頷いている。