ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「ここの学校なら大丈夫だ。もちろんあなたに行かれるのは残念だがね。それに向こうの村にも教師は必要だ。牧師館内に学校を造るのもよいのではないかな? もちろん、できることがあれば何なりと協力しますぞ」
ローズは頭の中で忙しく考えながら、ゆっくりと慎重に答えた。
「ありがとうございます。ですが少し考えさせていただけませんか。何しろあまり急なお話で……」
「もちろんだとも」
もっと何か言いたそうな夫人に目配せし、彼は立ちあがった。
「さっそくだが、明日の午後、ウォリス牧師を午後のお茶に招待している。ぜひ、出てこられたらいい。こういう話は、じかに会ってみるのが一番だ」
キングスリー夫妻が部屋を立ち去った後、彼女は椅子に座ってじっと考えていた。
夫妻は明らかに大乗り気だ。断っても、もうここで教師を続けていくのは無理だわ。
しかも知らないうちに下宿の部屋がなくなっていたなんて。それこそ、エヴァンを恨みたくなる。