ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
結婚……。
自分が結婚したい相手はたった一人だけだ。それが叶わないなら、どうすればいいのだろう。
考えてもいない時に人生の一大選択肢を突きつけられた気分だ。
だが今は、彼と再会したばかりだ。他の男性との結婚など、想像すらできそうになかった。
それでも、シークエンドの牧師館の手伝いや、学校が続けられると言う話には興味を引かれる。
エヴァンは、この話をどう思うかしら。怒るかしら?
わたしのことも少しは心配してくれていたようだから、安心するかも知れないわね。
そう考えながら、胸がずきりと痛んだ。
◇◆◇
その時再びノックがあった。今度はメアリーが取りつくろった笑顔で入ってきた。
「お加減はいかが?」
「はい、お陰様でよくなりました」
珍しい。いったい何だろう。普段自分のことなど、しがない村の教師と見てまったく無視している気位が高い人なのに。
「少しお話したいの。構わないでしょ?」
嫌とは言わせないわよ、という態度がありありと見える。
むっとしたが顔には出さず、ローズは立ち上がると優雅に椅子を勧めた。