ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「あら、びっくりさせてしまったかしら、ミス・レスター。ごめんなさいね」
メアリーの口元にあでやかな笑みが浮かぶ。
「あたし、あの方に夢中なの。あんなすてきな男性に会ったのは初めて。あの方のこと、もっと知りたいわ。ロンドンに工場をお持ちなんでしょ? お父様と話していらっしゃるのを聞いたもの。お忙しいんですってね。なのにどうしてわざわざこんな田舎に来られて、何日も留まっていらっしゃったと思う?」
「……花嫁の準備が整うのを待っていると、おっしゃっていましたわ」
ローズは、やや投げやりな口調になった。こんな話は早く切り上げてしまいたい。さっきの夫妻の提案をよく考えなければならないのに、その上これではとてもたまらない。
「本当に? 本当にそうおっしゃったの? やっぱりそうだったのね」
メアリーは勝ち誇った声を上げた。手を叩き飛び上がらんばかりだ。
「あたしに何もお話にならないなんてひどいわ。突然話してびっくりさせる計画かしら。戻っていらしたら、質問攻めにしてしまうわ。そういうことなら、お母様にお話して支度しなくては」
メアリーは生き生きとした表情で立ち上がった。聞きたかったことを聞いた、という満足感が浮かんでいる。