ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「はい、もちろん……」
悪い方ではない、と言いたかったのだが、その肯定の言葉を聞くなり夫人は顔をほころばせた。
「まあ、あなた、お聞きになって? それならこんないいお話、延ばす理由など一つもありませんよ」
「お、お待ちください、わたし……」
「全部わたくし達に任せておけばいいの。あなたは何も心配入らないのよ」
「困るんです。本当に、あの……」
「善は急げと言うではありませんか。来週にでもシークエンドに行って牧師館で暮らせるように準備を整えなくてはね。結婚式は、そうね、何しろ牧師様の結婚式ですから、ここの教会の牧師様が執り行われるのが、格から言ってもよろしいわね」
「奥様!」
際限なく話し続ける夫人になかばあきれていたが、とんでもない結論が出そうになって、ローズは慌てて遮った。
「わたし、まだどなたとも結婚するつもりなんかないんです。ただ、もしシークエンドの牧師館で、お手伝いさせていただけるのでしたら、喜んで行きたいと思います」