ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
夫人は夫と顔を見合わせ頷いた。
「何しろ急な話ですしね。ではまず、シークエンドの村を見て、牧師館や村の人に会ってみるというのはいかが? 向こうの様子も知りたいでしょう?」
「はい、できましたら」
「ではあなたの具合が完全によくなったら……」
その時、『十日ほどで帰ってくる』と言ったエヴァンの言葉を思い出し、はっとした。
もう期日まで僅かしか残っていない。できることなら、彼が戻る前に向こうへ行ってしまいたかった。
花嫁としてメアリーを伴い再び出ていく姿に、耐えられるとは到底思えない。
彼女は衝動的に決心した。
「わたし……、もうすっかりよくなりました。できるだけ早くに、よろしければ明日にでも行かせてくださいませんか?」
突然急き込んだローズに、キングスリー氏もしたり顔で頷いた。
「ではウォリス牧師にそう伝えよう。彼も喜ぶだろう。明日、あなたをシークエンドに送ってあげましょう」