ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
年明けた一月の空には、どんよりと雪雲が広がっていた。
ローズが馬車に乗ってシークエンドに到着したのは、キングスリー夫妻に礼を述べて屋敷を出発してから二時間後の夕刻だった。
キングスリー氏の命に従い、御者は極めて慎重に馬車を走らせていった。
どこまでも続くなだらかな丘陵地の合間に時折羊牧場が見え隠れする。やがて行く手に村が見えてきた。
すぐに教会があった。馬車は古い石造りの家の前に止まった。
ここが牧師館なのかしら?
ローズがゆっくりと馬車から降りると、ウォリス牧師が笑顔で歩み寄ってくるのが見えた。
「ようこそシークエンドへ。お待ちしていましたよ」
牧師は御者に礼を述べ、ローズの荷物を持って館へ案内した。
玄関を入った所に大きめの居間があり、村人達が集うラウンジが設けられていた。
どうやらそこが食堂もかねているらしく、痩せた年配の婦人が暖炉にかけた鉄鍋を大きなさじでかき回している。
黄色いランプの光で、館内の様子は見て取れた。
少し埃が積もり、足元の敷物も洗濯の必要がありそうだ。彼女の視線を追った牧師が、きまり悪そうに言った。