ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「見苦しい有り様で申し訳ない。実はいつも手伝いに来てくださるご婦人が今留守でしてね。ミセス・ファーラー一人ではなかなか手が回らないのです。少し散らかっていますがどうぞ辛抱してください。さあ、こちらがあなたの部屋です」
それでも客室はきちんと整っていた。ローズは着替えながらほっとした。
やはりキングスリー家は何となく居心地が悪かったのだ。
牧師とともに夕食を取りながら、ローズは彼に好感を持ち始めていた。
温厚な人柄で、何より村人のためよき牧者たらんとしているのが、ありありと伝わってくる。この人とならきっとよい友人になれるだろう。
寝室に引き上げる頃には、さすがに疲れていた。早々にベッドにもぐり込む。
明日からここで働こう。さいわい仕事は山のようにある。メイドのような仕事だって、別に構わない。
あれこれ思い悩む暇もないほど忙しくしていれば、時は自然に過ぎていくだろう。
だが、眠りに落ちる前にローズの瞼の裏に浮かんだのは、やはりエヴァンのダークブルーの瞳だった。