ウェスターフィールド子爵の憂鬱な聖夜
「おはようございます、デントさん」
よそよそしくこれだけ答え、無視して席に着こうとする。
「おいおい、もうちょっと愛想よくしてもいいんじゃねぇか?」
「でしたら、そういう女性にお声をかければいいでしょう?」
デントはニヤニヤしながら、彼女の腕に手をかけてきた。
「そうつんけんすんなよ。今日はクリスマスだ。あんたみたいな別嬪さんが一人でいるのはもったいないって。実は俺もパーティに招待されてるんだ。一緒に踊ろうぜ。……おっと、いけね、エスコートしてあげましょう、だな。礼拝の後で待ってろよ」
「わたしにも選ぶ権利はあると思うわ。絶対にご遠慮します。他を当たってくださいね」
ローズは相手の手を邪険に振り解こうとしたが、まだ離さない。嫌だって言っているのにしつこいわね。とっさに、思いついたことを口にする。
「実は先約があるんです。だからちょっと難しいわ」
「先約ぅ? これは聞き捨てならねぇな、どこのどいつだ?」
彼はわざと荒っぽく言うと、冗談めかして近くにいた婦人にウィンクしてみせた。
「ミセス・マージョリー、ミス・レスターの新しいお相手をご存知で?」