僕の可愛いお姫様
「そんなに俺等が邪魔なら二人で会えば。」

感情が込もっているのか、込もっていない様にもとれる、瑞穂の声。
泉は慌てて首を振った。

「ごめん、瑞穂。そういう意味じゃないんだ。ただ…。」

「あーっはいはいっ!泉、気にしないで。
もう、瑞穂!意地悪言うの止めなさいよ。
私は泉の気持ち解るわよ?一番先に視界に入っちゃうのって、やっぱり一番好きな人だもん。」

悟った様に、莉世は一人、うんうん、と頷いた。

「あっそ…。」

やっぱりつまらなそうに呟いた瑞穂は、無理矢理会話を打ち切る様に、乱暴にグラスの中身を飲み干した。

困惑している泉に、「大丈夫だよ。」と伝わる様に、視線を合わせ、もしかしたら苦笑いともとれるかもしれない表情で、私は笑って見せた。

瑞穂の口調は、いつも少しだけ人を勘違いさせた。
気心知れた相手なら大目に見て良しとしても、親しくはあってもまだ付き合いが浅い人、顔見知りであっても然程親しくはない人には、「瑞穂」という人間を勘違いさせる。

厄介なのは、本人に自覚が少ない事だ。
「人間」が悪いわけじゃない。
悪いと思えば素直に謝罪するし、たまにだけど冗談も言う。

ただ人よりぶっきらぼうで殺伐としたその口調は、瑞穂を損させている。

泉の事だって嫌いなわけじゃない。と思う。
この「仲間」達には、瑞穂を悪く思わないで欲しかった。



私の表情を察してか、泉は少しだけ、安心したような目をして、きちんと伝わったのだと、私も安心した。
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