僕の可愛いお姫様
ドアチェーンを外して、ゆっくりドアを開ける………、瞬間に、ガッとドアの隙間から掌が侵入してきた。

躰を仰け反らせて距離を取る。
掌はお構いなしに、ドアをこじ開けてきた。

「何か用?」

明らかに既に取り乱している相手に向かって、俺は取り乱す事もなく投げ付けた。

「なぁ、梅雨李が居なくなっている事、知っているよな?梅雨李だけじゃない。
この前から莉世とも連絡がつかない。

いや、二人だけじゃない。
梅雨李と連絡がつかなくなった夜から…お前ともずっと連絡がつかないんだよ…!」

名探偵にでもなったつもりか、彼は声を荒げながら言葉をぶつけてくる。
少しずつ力を強めながらドアをこじ開けようとしてくる事に、こちらも抵抗するのがだるくなってくる。

パッとこちらが力を抜けば、向こうは「諦めた」と取ったのか、勢いよく玄関の内側へ侵入してきた。



「梅雨李は何処だ?居るんだろう。梅雨李…梅雨李っ!!!つゆりーーーっっっ!!!」

はぁ、と溜め息を吐いて、相手との距離を縮める。
今の声は、確実に梅雨李に届いているだろう。

まったく…。
思った通り、面倒な男だ。

「ちょっと、お前うるさい。」
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