僕の可愛いお姫様
昨日、梅雨李は結局目を覚まさなかった。
それ程酷い衝撃を与えたつもりはない。

精神的な何かが引き起こす現象なのか、確かな事は分からないが、俺は梅雨李の寝顔を見ているだけで十分で、
この空間でそうしていると、本当に世界中で二人きりになった錯覚に陥る。

何より梅雨李が目を覚まさない事は、都合が良かった。
浴槽の処理をしなくてはいけなかったし、プレゼントの準備もあった。

二人で誕生日を過ごす事は初めてだったから、本人よりも俺の方がワクワクしていたんだと思う。



今朝、目覚めて目玉焼きとウィンナーという簡単な朝食を済ませた。
その朝食を、梅雨李は「甘くて美味しい。」と称した。

違和感なんてどうでも良かった。
ただ笑顔で髪を撫でてやる。
それだけだ。

朝食の片付けを済ませて、「あの箱」を持って、梅雨李のいるリビングに戻る。

よくあるありきたりなやつ。
クリスマスケーキが入っていそうな、白くて、赤いリボンがかかっているアレだ。

少し大きめのその箱に、梅雨李は目を丸くして、驚いている。

ひょっとしたら本当に自分の誕生日を忘れてしまっているのかもしれない。
虚ろな瞳でプレゼントと俺の顔を交互に見る彼女の髪の毛を、ゆっくりと撫でる。
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