僕の可愛いお姫様
「でもさー、まさか梅雨李がオーケーするとは思わなかったよ。」
「私も。私がオーケーするとは思わなかった。」
既に冷め切ったアップルティーを口に含む。
始まろうとしている春に、冷め切ったアップルティーは、躰を冷んやりとさせる。
冷め切った紅茶は渋味を増していて、口内に広がるその味に、顔をしかめるのが自分でも分かった。
莉世と瑞穂との出逢いは高校生の頃。
高校の入学式、同じ中学校からの友人とは皆クラスが離れてしまい、人見知りの私は不安を抱えて、ジッと俯いていた。
「変わった名前だね。」
その時、そうやって声をかけてくれたのが、莉世だった。
目の上で切り揃えた前髪に映える、大きいまん丸の目。
にこにこと笑いながら「『梅雨李』、なんてきっと、世界中であなただけだよね。」なんて言っている。
「そう…かなぁ…?」
梅雨の季節に生まれたから、梅雨李。
その単純な名前を特別珍しいと感じた事は無かった。
「このクラスでは、ダントツで変わった名前ね。」
何故か莉世は満足そうに頷いている。
「見て。」
彼女は隣の席を指さしている。
入学式の日。
一人一人の机には、その席に座る生徒のネームプレートが置かれていた。
「『ミズホ』だって。可愛い子かなぁー。可愛いよね、絶対!」
「可愛い女の子じゃなくて悪かったな。」
タイミング良く…なのか分からないけど、背後からのその声の主は、何のためらいもなく、その席に座った。
チラリと目を合わせた莉世は悪戯に失敗した子供みたいな顔をしていて、私達はコッソリと笑った。
三人、共に大学に進学し、今も、こうして、たまにではあるがお茶をする。
莉世と瑞穂は大学入学を機に交際を始めた。
こうして三人で顔を合わせていても、自身のお邪魔虫な感が否めなくて、いたたまれない。
二人でデートすればいいものを、けれど二人は三人で会いたがる。
どちらかというと、莉世が、だけど。
「この関係は変わらず、壊したくない」と、莉世は主張していた。
「私も。私がオーケーするとは思わなかった。」
既に冷め切ったアップルティーを口に含む。
始まろうとしている春に、冷め切ったアップルティーは、躰を冷んやりとさせる。
冷め切った紅茶は渋味を増していて、口内に広がるその味に、顔をしかめるのが自分でも分かった。
莉世と瑞穂との出逢いは高校生の頃。
高校の入学式、同じ中学校からの友人とは皆クラスが離れてしまい、人見知りの私は不安を抱えて、ジッと俯いていた。
「変わった名前だね。」
その時、そうやって声をかけてくれたのが、莉世だった。
目の上で切り揃えた前髪に映える、大きいまん丸の目。
にこにこと笑いながら「『梅雨李』、なんてきっと、世界中であなただけだよね。」なんて言っている。
「そう…かなぁ…?」
梅雨の季節に生まれたから、梅雨李。
その単純な名前を特別珍しいと感じた事は無かった。
「このクラスでは、ダントツで変わった名前ね。」
何故か莉世は満足そうに頷いている。
「見て。」
彼女は隣の席を指さしている。
入学式の日。
一人一人の机には、その席に座る生徒のネームプレートが置かれていた。
「『ミズホ』だって。可愛い子かなぁー。可愛いよね、絶対!」
「可愛い女の子じゃなくて悪かったな。」
タイミング良く…なのか分からないけど、背後からのその声の主は、何のためらいもなく、その席に座った。
チラリと目を合わせた莉世は悪戯に失敗した子供みたいな顔をしていて、私達はコッソリと笑った。
三人、共に大学に進学し、今も、こうして、たまにではあるがお茶をする。
莉世と瑞穂は大学入学を機に交際を始めた。
こうして三人で顔を合わせていても、自身のお邪魔虫な感が否めなくて、いたたまれない。
二人でデートすればいいものを、けれど二人は三人で会いたがる。
どちらかというと、莉世が、だけど。
「この関係は変わらず、壊したくない」と、莉世は主張していた。