僕の可愛いお姫様
「何だかんだ言っても、仲良くやってるみたいで良かったじゃん。」

ニッと悪戯っぽく笑った莉世は、グラスに残ったメロンソーダを一気に飲み干した。

「あっまいなー。」

炭酸の抜け切ったソレは、最早ただのメロンシロップなんだろう。
莉世もまた、私と同じ様に顔をしかめている。

その隣では、真っ直ぐに私に注がられる視線があった。

「真面目に聞いた事なかったけど、どうしてあの告白、受けたんだ。」

純粋な疑問を瑞穂に投げられて、私は正直、言葉に詰まってしまう。

あの日、今まで積み重ねてきた常識から言えば、告白の返事は迷わず「ノー」だった筈だ。
なのに私の口から飛び出したのは、承諾の言葉だった。

あの頃の私は、片想いすらしていなかった。
彼氏が居た事もあるけれど、長く続いた「真剣なお付き合い」は、した事がない。

好きな人なんて、作ろうと思えば出来るものでもなく、また「作ろう」だなんて思うものではないと思う。

日常生活に「恋愛」という潤いがないのに、周りでは女子特有の恋愛トーク。
直ぐ隣では親友が、長い片想いを実らせている。

嫉妬とか僻みとかでは決してない。…と思っていた。思い込んでいた。
けれど、日々の生活で、恋愛という潤いを与えられていない感情は、少しずつパサパサに乾燥しながら、ささくれていた。

必死で隠した孤独。
私だって人間だ。どんなに取り繕ったって、羨ましいな、とか、そりゃあ少しは嫉妬だってしてきただろう。

そこに突如舞い込んだ刺激。

「好きになりました。」

その言葉は確実に、一瞬で、私を日常から連れ出してしまった。

自分から持ち掛けた癖に、私の返事に「彼」は絶句した。
絶句して直ぐに、とても、とても柔らかい微笑みを浮かべた「彼」を見て、私もまた一目惚れだったのかもしれない。

実にシンプルに、単純に、恋に落ちた。
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