今ここにいる
急ぎ足で走る同じ制服の奴らを横目にスイスイと走る
今日も俺の愛車は絶好調
追い抜いていく俺を白い目で見る遅刻常習者たち
…悪く思うなよ
俺だってコレが欲しくて、放課後のゲーセンもカラオケも泣く泣く断って勤労に励んだんだ
信号に差し掛かり、そろそろかと歩道の先に目をやると、見慣れた後ろ姿が見えた
近付いて徐行してクラクションを鳴らす
『お〜す』
『お〜、待ってました』
路肩に止めた俺の愛車に跨がり、当たり前のように腰に廻される小さな手
その先は綺麗な色に染まり、所々にラインストーンが散りばめられている
『お前さ、こんなんやる時間あるなら、もちっと早く起きろよ』
『うるさいな、早くしないと遅れるよ』
腕に力が入り、俺との距離がグッと縮まった
『っ…』
コイツは…
どうせわかってないんだ
俺が言ったことなんか覚えてないだろう…
まぁ早起きされたらコレもなくなるわけで
それは…困るわけで
緩む頬を引き締め、背中にある温もりを感じながらアクセルを握った