桜姫【短編】
いつしか、私は彼と話をしたくて仕方なくなりました。ですが叶わぬ夢でございます。
当たり前です、私は人間などではないのですから。同じ思考を持っているのかも、わからないのです。
いつか。いつか。一言でもいい。
ただ、ありがとうと伝えたい。
桜が散って葉桜になった頃、彼はお嫁さんを連れてきました。
かわいらしい人だった。
それだけのことが、辛い。
桜はだんだん花を咲かせることが苦しくなりました。
彼に見てほしくて綺麗に咲き続けてきたのです。
その意味が見いだせなくなってしまいました。
彼が冬にやってきました。
悲しそうに私を見つめるのです。
あなたたちは羨ましい泣くことができる。