桜姫【短編】


彼はそれから四回違う姿の私を見に来ました。
嬉しくも悲しい、そんな気持ちで。
私は長いこと生きておりました。
彼はその何分の一しか生きれない。

どうして私が人間でなかったのだろうか。
彼はずっと、寂しそうな目で私を見ては背をむける。
そんなことが彼がここに来るのが途絶えるまで続いた。
60年は続いたのだろう。

彼は最後にこう呟いた。

「サクラ、ごめん。…………ありがとう」




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