桜姫【短編】
その言葉を何度も咀嚼すれば、心から、頭の奥に潜んでいたものがじわりと滲み出た。
《なぁ、サクラ……………俺はもう、お前を恨むしかできない》
いつの時代かはわからずとも____彼だった。短剣を私の喉元に向けている。
《俺はずっとお前と一緒にいて、結ばれない運命になると思う》
ポタリ。ポタリ。
《それはお前が望んだから、俺と結ばれないと望んだからだ》
ポタリ。ポタリ。
《桜は、あなたを、愛します。ずっと。》
《サヨナラだ、桜》
これが、記憶というならば。
私は。
私は……。
サクラは桜でした。
赤に染められたからサクラは桜であり、サクラでした。
来世もその次も、きっと私はあなた様と結ばれない運命なのでしょうか。
私も、貴方が言ったようにしか、思えないのです。
私は、もう、散る。
死んだ貴方は、私の下に埋められました。
私は時折話しかけました。
やっと、隣にいれる。
たとえ、報われなくても。
end