悪魔と過ごす非日常
「そう言えば君何か飲んだり食べたり出来るの?」
玄関で靴を脱いでリビングに行く途中ふと思ったことを聞いてみた。
「食べたり飲んだり出来なくは無いですが、しなくても平気です」
少女は少し不思議そうに答えるとなぜですか?と続けた。
「いや外暑かったから喉渇いてるかと」
リビングの扉を開きながら答えると、後ろからフフフっと鈴を転がしたような笑い声がする。
振り向くと少女はにこにこ笑いながら、お気遣いありがとうございますとお礼をしてきた。
「ですが、私たちは人ではありませんのでお腹が空いたり喉が渇いたりはしません。まぁ人間の精気なら頂くこともありますが」
「せいき?」
「はい。簡単に言えば私たちの食事です」
「食事?」
「それより喉が渇いているんですよね。何か飲まれなくていいんですか?」
相変わらずふよふよと宙を浮いている少女は、冷蔵庫の方を指差しながら話はそれからにしませんか?と笑った。
あぁそう言えば喉渇いてたななんて呑気に思いながら、少女に従うような形でリビングに入り、冷蔵庫から冷えた麦茶を出しグラスを二つ持ってテーブルに着く。
俺がテーブルの側まで来ると、少女はふわふわとこちらに近づき隣に並んだ。
「椅子に座ったら?」
そう聞いてからふと思った。
浮いているのに椅子に座れるのか?と。
だが、そんな疑問を余所に少女はありがとうございます。とお礼を言った後、普通に俺の前の椅子へと腰をかけた。
なんだ普通に座れるのか。