ふくらはぎの女(ひと)【完】
「あと数センチ傷が深かったら・・・
危なかったらしいのよ」
ひょっとして母の腹の傷よりも深いのでは、
と傷口を見てもいないのに
思ってしまうほど深い深い縦皺を
眉間に寄せた叔母がつぶやいた。
当時健在だった祖母は
ぶるぶると震えながら
叔母に肩を支えられたまま泣いていた。
「まったくあの娘は・・・
だからあんな男と所帯持つなんて
親戚中で反対したのにねぇ」
祖母の涙はゆらりぶらりと
後から後から揺れながら
こぼれ落ちていった。
なんとも言えずに私は押し黙り、
ただただ立ち尽くしていた。