ふくらはぎの女(ひと)【完】
その夜は母の寝顔だけを確認し、
回復してきたと連絡が入った
何日か後に再び三人で病院へ向かった。
重苦しい空気を纏って
エレベーターを降り、
母の病室のドアをノックすると
「はーい。どうぞ」
いつもの母の声がした。
うっと込み上げそうになる涙を堪えて、
私は静かにドアを開けた。
すると。
「おはようー」
ベッドの上。
はにかんだように笑う、母がいた。
そして。
「お母さん、容子ちゃん、娘子ちゃん」
一人一人の顔を見て名前を呼び、ぺこり。
お辞儀をした。
「心配かけちゃって、ごめんなさい!!」
「・・・・・・・・・・・」
三人分の「・・・・・・・・・・・・」
ドアを開ける前よりも、
ある意味断然重苦しい、長い沈黙が続いた。